引数を使わずに結果を返す設計のすすめ:リファクタリングでコードの質を向上させる方法

引数を使わずに結果を返す設計は、リファクタリングやコードの改善において重要なテクニックの一つです。

本記事では、「引数で値を返さない」コード設計の良し悪しを解説します。このアプローチはC#に限らず、他の多くのプログラミング言語でも応用可能です。

引数を多用することで生じる問題点と、クラスを返すことによって得られる利点を比較し、コードの質を向上させる方法を学びましょう。

目次

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    引数で値を返さない設計の重要性

    引数で値を返さない設計は、コードの品質や可読性、メンテナンス性を大きく向上させます。

    特に、複数の結果を返すような場合に引数を利用すると、コードが煩雑になり、他の開発者や将来的な自分にとっても理解しにくいコードになりがちです。この設計を採用することで、次のような効果が得られます。

    1. 可読性の向上
      引数で値を返さずに専用のオブジェクトやクラスを返すことで、どのデータがどの順番で返されるかを直感的に理解できます。例えば、RPGのキャラクター生成を行う場合に、「体力」「攻撃力」などの複数のデータを返す際、それらの情報を一つのCharacterクラスとして返すほうが、out引数を使って複数の値を渡すよりも明確でわかりやすくなります。
    2. 拡張性の向上
      引数で返すデータをクラスでまとめることで、後からデータの項目が増えても簡単に対応できます。例えば、将来的にキャラクターに「防御力」や「スピード」などの追加パラメータを導入する際も、Characterクラスにプロパティを追加するだけで済み、呼び出し側のコードにも影響が少なくなります。
    3. メンテナンス性の向上
      コードの保守や修正が容易になります。引数が多いメソッドはテストやバグ修正が困難であるため、専用のクラスやオブジェクトを返すことで、保守がしやすくなります。さらに、引数を通じて値を返さないことで、メソッドに求める責務が明確化され、メンテナンスしやすいコード構造を保つことができます。
    4. 再利用性の向上
      返り値としてクラスを使うことで、生成したデータを他のメソッドやプロセスに容易に渡せるようになります。例えば、生成したキャラクターのデータをそのまま他の処理に利用する際、引数で返したデータを再構築する必要がなくなり、他の機能への再利用がスムーズになります。

    このように、引数を使わずに結果を返す設計は、コード全体の設計品質を高めるための重要なポイントです。

    複雑な処理やオブジェクトを扱う場合ほど、この設計のメリットが際立つため、実践的なリファクタリングに取り入れることが推奨されます。

    RPGゲームのキャラクター生成を例にした悪いコード例

    RPGゲームでキャラクターを生成する際、引数を使ってキャラクターのステータスを返す設計は、コードの可読性やメンテナンス性を損なうことがあります。

    以下のコードは、out引数を使ってキャラクターの「体力」と「攻撃力」を返す悪い例です。

    public class CharacterGenerator
    {
        public void GenerateCharacter(out int health, out int attackPower)
        {
            health = 100; // 基本の体力
            attackPower = 15; // 基本の攻撃力
            // 他のステータスや処理が追加される可能性もある
        }
    }
    
    // 使用例
    CharacterGenerator generator = new CharacterGenerator();
    int health, attackPower;
    generator.GenerateCharacter(out health, out attackPower);
    

    このコードでは、キャラクター生成の結果をout引数で返していますが、引数が増えるとコードが複雑になり、意図がわかりにくくなります。また、他のプロパティを追加したい場合にもメソッドの変更が必要となり、保守性が低下します。

    良いコード例:結果を返すためのクラス設計

    良い設計の例として、キャラクターのステータスを管理するためのCharacterクラスを作成し、メソッドからそのクラスのインスタンスを返すように改善します。

    この方法により、可読性とメンテナンス性が大幅に向上します。

    public class Character
    {
        public int Health { get; private set; }
        public int AttackPower { get; private set; }
    
        public Character(int health, int attackPower)
        {
            Health = health;
            AttackPower = attackPower;
        }
    }
    
    public class CharacterGenerator
    {
        public Character GenerateCharacter()
        {
            int health = 100; // 基本の体力
            int attackPower = 15; // 基本の攻撃力
            // キャラクターオブジェクトを生成して返す
            return new Character(health, attackPower);
        }
    }
    
    // 使用例
    CharacterGenerator generator = new CharacterGenerator();
    Character character = generator.GenerateCharacter();
    

    このコードでは、GenerateCharacterメソッドがCharacterオブジェクトを返すことで、out引数を使わずにキャラクターの情報を取得できます。これにより、以下のような利点が得られます:

    • 拡張性:新しいステータス(例えば防御力やスピードなど)をCharacterクラスに追加するだけで、メソッドの修正なしに対応できます。
    • 可読性:返り値としてCharacterクラスが明示的に返されるため、どの情報が得られるのかが一目でわかります。
    • 再利用性:生成されたCharacterオブジェクトを他の処理に簡単に渡して利用することができます。

    このように、専用のクラスを返す設計により、コードがシンプルで管理しやすくなるため、特に大規模なプロジェクトや複雑な処理を含むシステムでは効果的です。

    設計のメリットと考え方

    引数を使わずに結果を返す設計は、コードの品質を向上させ、開発者にとっても扱いやすい設計を実現します。この設計のメリットと、考え方について詳しく見てみましょう。

    • 可読性の向上
      専用のクラスやオブジェクトを返すことで、どのようなデータが返されているかが一目でわかります。特に複数の値を返す際には、outrefを使わずに済むため、コードの流れがわかりやすくなります。
    • 拡張性
      新しいステータスやプロパティが追加されても、クラスにプロパティを追加するだけで簡単に対応可能です。メソッドの引数や処理内容に手を加える必要がなく、柔軟に対応できます。
    • メンテナンス性の向上
      メソッドが複雑化せず、結果を返すクラスにまとめることでメンテナンスしやすくなります。コード変更が少なく、バグの原因も少なくなるため、保守にかかる負担が軽減されます。
    • 再利用性
      クラスとして返すことで、生成されたデータを他のメソッドや機能にそのまま渡して利用できるため、再利用性が高くなります。これにより、複数の箇所で同じデータを扱う際にも、再定義や複雑な手続きが不要です。

    このように、引数で値を返さずにクラスとして返す設計は、コードの拡張性や再利用性を高め、保守性を向上させるため、特に大規模なプロジェクトや頻繁な変更が発生するシステムにおいて有効です。

    まとめ

    • 引数で値を返す設計は、コードの可読性や拡張性を損ない、メンテナンスが困難になることが多いです。
    • 専用のクラスを返す設計を導入することで、複数の値を扱う場面でシンプルかつ直感的なコードに改善できます。
    • 可読性・拡張性・再利用性の高いコードは、長期的なプロジェクトにおいて大きなメリットとなります。

    コードの設計を見直し、引数で値を返さずに結果を返す設計を取り入れることで、シンプルで保守しやすいコードが実現できます。

    特に複雑なデータ構造やオブジェクトを扱う場面では、柔軟性の高いこの設計が役立ちます。コードの品質向上を目指して、ぜひこのアプローチを検討してみてください。

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